ぷよM@S−「フィクションで勝敗を伝える」とはどういうことか?−

今まで僕はフィクションで勝敗を伝える鍵になるのは「理と情」だと思っていた。
その二つが最も読者に「納得感」を与えるからだ。それぞれ詳しく説明すると・・・

①理
勝敗のプロセスを客観的に描写する手法。例えば「ドラゴンボール」の勝敗は基本的に戦闘力の高低で決まる。戦闘力が低い者が高い者を倒す時には、何らかのロジックが組まれる。「戦闘力が一時的に上がる界王拳を使った」とか。

DRAGON BALL(全42巻セット) (ジャンプコミックス)

DRAGON BALL(全42巻セット) (ジャンプコミックス)

他にも福本伸行さんのギャンブルマンガなどは、ひたすら勝敗のロジックを組むことで納得感を産んでいる。組んだ上で裏切る・・・という展開もあるのだけど、「組んだロジックの高さ」がその裏切りを担保していたりするわけだ。より物理的というか、外部要因の描写で納得させるタイプ。

②情
読者の感情移入させ、「こいつなら勝つ!」と思わせる手法。例えば「バキ」ではしばしば勝敗の分け目に登場人物の回想シーンが描かれる。そこで、「こいつはこれだけの過去を持ち、これだけ努力してきたんだぜ!」という物語が挿入され、読者への感情移入の誘導が行われる。

グラップラー刃牙 (1) (少年チャンピオン・コミックス)

グラップラー刃牙 (1) (少年チャンピオン・コミックス)

他に・・・作品名は失念したが、水島新司さんの作品で、事前に「岩城に三振させよう」というストーリーを組んで絵を描いたところ、すごく良い絵が描けたことがあるそうだ。そして、「このスイングだったら絶対ホームランになるはずだ!」と、ストーリーの方を変えたという。これは「理のではなく情(絵の力)によって作者自身が説得された」わかりやすいエピソードだと思う。
ドカベン (1) (少年チャンピオン・コミックス)

ドカベン (1) (少年チャンピオン・コミックス)

「感情の強さ」や「勝負に対する心構え」なんかで説得力を持たせるのもこちらに分類できると思う。主観的、というか共感的というか・・・内部要因の描写で納得間を産むタイプ。

さて。
今上げた2つの他に、最近第3の方法があることに気付いた。
それが、
③実際のゲームを利用する、だ。
例えば「ハチワンダイバー」。
これは将棋の話なんだけれど、主人公が対戦相手に追い詰められるシーンってわかる人にとってはどんなバトルマンガのピンチの描写よりも真に迫っているだろうな、と思う。「フリーザ様の戦闘力がハチャメチャに高い」、とか「肋骨が何本かイッた」とかよりも将棋そのものが持つ説得力。知っている人にとって、「この局面はどー考えても負けだろ?」という局面が度々あるのではないかと想像する(僕は将棋よくわからないので)。

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

そして最近見た「ぷよM@S」もそう。
これは「ぷよぷよ」を題材にしたバトルなんだけれども・・・これ、めちゃくちゃ凄い!「ぷよぷよ」がこんなに深いゲームだとは知らなかった・・・僕は致死連鎖作れないからなー・・・。
そしてこの「ぷよM@S」は、③「ぷよぷよ」本来が持つ面白さや、②勝負に必要な心構え、①「何故強いか?のロジック、と今まで説明してきた全ての要素がバランスよくミックスされた、凄い作品です。
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今まで挙げた作品はどれもおすすめだけど、ぷよM@Sはタダで楽しめるので、未見の人は是非見てみてはどうでしょう?ちょっと長いかもしれないけど(笑)
個人的にはPart8くらいから加速度的に面白くなりました。